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エッセイ
飲み物は透明なグラスで
「透明なグラスに氷を入れて飲むと美味しいよ」彼女にそう言われて、ぼくはハッとした。ぼくに今足りていないものがわかった気がしたからだった。 最近のぼくは仕事に忙... -
詩
シャボン
口から出た言葉は輪郭を纏いしゃがみ込んだぼくの手を引いてくれたゆらゆらと宙を舞い降りしきる雨粒の隙間を縫って光が射す少し先の未来をぼくに見せてくれた先に行っ... -
詩
煙
躍起になって備える時はもうおしまい蓄えた武器はまだレベル1かわいい子には旅をさせよ行っておいでよどこまでも煙に包まれて息が苦しいよね捉えられない空気に身体が乗... -
詩
炭炎
ぼくの心から放たれる感情の行く先にはいつも高い高い壁がある四方に立ちはだかる壁に跳ね返され行き場を失い、しばらく空中を飛び回ったあと、やがて熱は下がり地面に... -
詩
迷子のあとに
足を踏み入れた小さな空間は古い木と紙の匂い四方を埋め尽くす膨大な本が心を弾ませそして迷わせるどれを手に取ればいいかわからずに立ち尽くす私はまさに今の私みたい... -
エッセイ
スローモーションの世界
詩を書くようになって、自分にとって生きることは苦しいことだったということを思い出した。 自分の心の内を探り、他人の感情に触れ、地図のない道を歩くことで、答えの... -
詩
ファンタジアで知る
朝でも夜でもない時間の隙間に きみとふたり入り込んだ アーケードのある商店街 今日は楽しいお祭りの日 メインストリートの両端には思い思いのブースが並び 大男たちが... -
詩
光射す白
湖の中で暮らす私は そこでの生活に満足していた 地上の光はあまりにも眩しくて 水面のフィルター越しで眺めないと視界が奪われ近づけなかった ゆらゆらと差し込む光 フ... -
詩
一輪花になって会おうよ
身を寄り添って咲く花たちに 光の塊を投げつけて散り散りにしてあげる 一輪の花に還すから そしたら話そうよ さっきまでは隠れてた君の 形、匂い、脈の行く先 隅々まで... -
詩
振り絞る
この部屋に漂っている空気を無造作に吸い込み力を込め、吐き出す大きな声を出すのはいつ以来だろう 自分の口から発せられた声はあまりにもか細くてひとりの空間ですら恥...
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