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スローモーションの世界

詩を書くようになって、自分にとって生きることは苦しいことだったということを思い出した。

自分の心の内を探り、他人の感情に触れ、地図のない道を歩くことで、答えのない問いが頭の中をぐるぐると回る。

だけど、これはきっと苦しいことだけじゃない。

子どもの頃から、スローモーションの世界が好きだった。

例えばスポーツをしている時、例えば階段を踏み外した時、毛が逆立ち、神経が表面張力の限界ぎりぎりで全身を流れていると感じた瞬間、視界はクリアになり、自分と世界のスピードがずれる。

世界が、ゆっくりになる。

あの感覚が好きだ。


大人になってから、今日やっと、思い出せた気がする。

なんとなくやり過ごしてた日々。

いつの間にか視界に入らないよう目を背けてたことに、今もう一度目を向けている気がする。

輪郭が見えたら、触れてなぞってみる。

かすかな音が聞こえたなら、聞き逃さないように耳を澄ましてみる。

ぼくは、そういうことが好きだったな。

その代償として苦しみがあったとしても、今なら逃げ出さずに抱きしめてあげられる気がする。


だから、大丈夫だよ。

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